【事例紹介】組織再編に伴うウェブサイト統合プロジェクト
- インプットポイント
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- 組織再編下の大規模プロジェクトを短期間で円滑に進行する為の体制・進め方について
- 関係者の多い中、どのように調整・確認事項をまとめあげたのか
- 組織再編を伴った大規模なサイト統合プロジェクト/期間6ヶ月
複数のグループ企業を跨いだ組織の再編に端を発し、全社のデジタルマーケティング戦略にも大きな見直しが入る状況となった。今回のプロジェクトでは、クライアントのデジタルマーケティング領域においてコーポ―レートサイトの統合およびリニューアルを担当することとなった。リリースの期日まで半年という中で、どのようにプロジェクトを進行し、予定通りのリリースに辿り着いたかをご紹介したい。
組織改編に端を発したサイト統合プロジェクト、クライアントはなぜコンサルタントをアサインするに至ったのか。
今回のクライアントは、ITサービスを提供する大手グループ企業の1つである。クライアントの属するグループでは、事業拡大や競争力の強化、サービスの開発強化といった背景から、近いうちに組織再編が実施される予定となっていた。
組織再編では、BtoB・BtoCといったサービス提供先の区分に基づいて、既存事業の統合や譲渡、廃止に連動して、グループ内組織の統合・分割までが見込まれており、当然ながら対象となる企業、サービスについては今後のデジタルマーケティング戦略の再考が必要となるだけでなく、サービスの移管や廃止に伴う告知業務や、稼働中のサイトに関しても統合後に一貫性を保持する為の対応に追われている状況であった。
特に、Web領域に関しては、グループの各社が独自のWebガバナンスによってサイトの運用を行っている都合上、設計思想をはじめとして、デザインや掲載内容、運用設計に至る全てが異なるという課題がある。また、実際にプロジェクトを進めようにも、通常業務と並行するために人的資源の課題や、そもそも、グループ各社を横断する大規模プロジェクトの経験がないことも課題となっていた。
そのような状況で、予てより同じクライアントの業務支援を行っている弊社に白羽の矢が立った。その理由としては、関係性が既に構築されていたことは勿論だが、デジタルマーケティング領域のプロジェクトマネジメントに強みがあり、在籍しているコンサルタントがWebも含めたデジタル全般に精通していることや、アウトプットについても高い評価を頂けていることであった。
リリースの期限まで、あと6ヶ月。短期間の大規模プロジェクトを実施する際の体制、進め方とは。
本プロジェクトは組織再編に伴うウェブサイトの統合が目的となっている。具体的には、統合の対象となった2社(A社・B社)に存在する約4,000ページを対象に、関係各社・各部署の調整、合意形成を得た上で、Webガバナンスが統合されたサイトが事業再編と同じ時期にリリースされることを目標としている。尚、着手開始時点でリリースは6ヶ月後に迫っており、短期間のプロジェクトとなっている。
今回の体制を大きく分けると、組織再編の対象となった二社(A社・B社)と弊社、そしてコンテンツ制作・運用を担当しているベンダーのC社という形になっている。
全体のプロジェクトマネジメントや事前調査・検討、運用設計を弊社が実施し、A社・B社には、主に社内の調整や確認事項、その他の関連タスクに注力いただくことで、短期間のプロジェクトをより効率的に実行する形で体制を整えることとした。コンテンツ制作についても、A社・B社の既存ウェブサイトを熟知しているC社に対応を依頼したことで、不測の事態にも万全の備えで対応することが可能となった。
また、本プロジェクトでは大きく3つのフェーズに区分した上で対応を行っている。
- 事前調査・検討
- コンテンツ制作、運用設計
- リリース、残課題整理
1.事前調査・検討
このフェーズではウェブサイトの調査を実施する前に、組織再編後のデジタルマーケティング戦略をクライアントがどのように描いているかをヒアリングすることからプロジェクトを開始している。
これは、クライアントがどのように今後の戦略を練っているのか(組織再編に伴って新たな戦略を構築するのか、またはいずれかの戦略を継承・更新していくのか等)を我々が知らなければ、再編後のウェブサイトに仕様や要件を落とし込むことが出来ず、今後のマーケティング活動の一環としてサイトを活用していくことが難しいことが背景にある。
本件の場合は、そのような戦略を議論する場が既に存在しており、実際に我々も議論に参加したため、解像度を高めた状態で、事前調査をはじめとする業務に臨むことが出来ているが、そういった場が存在しない場合には、会議の場をセッティングすることからプロジェクトを始めるケースも存在する。
事前調査・検討においては、統合対象となったA社とB社に存在するサービス、コンテンツの精査を行い、個々のサービスや、ページについて移管・移設の要否から、実際に画面構成を制作した上で、各社の掲載要素をどのように扱うかといった細かなことまで、検討を実施した。
サービスの精査に関して、最終的には約200種存在するサービスを1つ1つ検討する形となった。
なぜなら、A社・B社が提供しているサービスは自社サービスだけでなく、子会社をはじめとする他のグループ会社が提供しているサービスや、グループ外の他社が提供しているサービスを代理で販売しているケース、更には、A社・B社が提供しているサービスが一部、または完全に重複しているケース等、多岐にわたる為である。
コンテンツの精査については、A社・B社ともにプロジェクト着手時点で掲載されているページに関して目視による確認を行い、サイトの構造をはじめとして、カテゴリや掲載要素、各種機能の有無をもとにテンプレート数の整理を行った。また、統合後に統一されたテンプレートを利用することを念頭に置いた上で、画面設計書の制作を行い、画面単位での検討を実施する運びとなった。
機能面では、当然ながら各社で共通している機能(各種フォーム、ユーザー分析)と、どちらか一方にしか存在しない機能(チャットボット、SSO等のログイン機能、メールマガジン等)に分かれていたものの、冒頭のデジタルマーケティング戦略の内容に沿って、移設要否の精査を実施した。また今回は、異なる環境において、そもそも機能を移設することが可能かどうかといった、フィージビリティテストの実施も行っている。
2.コンテンツ制作・運用設計
このフェーズでは、コンテンツ制作をC社に一任しつつ、全体の進捗管理と並行して、公開後の運用について検討を実施した。
以前まではA社・B社ともにウェブサイトの担当部署が存在していたが、今後はA社の部署が主に運用を行う想定となっていたため、B社の運用ルールや、コンテンツの新規制作・更新・削除のみならず緊急時の対応や予算管理等についてヒアリングを行い、どのようにしてA社の運用フローに組み込んでいくかといった検討を実施した。
この際に、大きく異なっていたのは運用体制の面となっており、A社は主に外注を活用していたのに対して、B社の場合はPDCAの効率化を図るため、業務によっては内製で対応しているケースが存在した点である。
通常であれば、一部業務を抜粋して、内製を行うことは業務効率化の面で好ましくないが、本件については、既存のサービス提供に影響がでるケースが存在した為、A社のフローにB社のフローを一部組み込む形で、運用の設計を行うこととしている。
3.リリース・残課題整理
C社が制作し、A社・B社で検収を行ったコンテンツに関して、弊社では公開前日から当日のタイムスケジュールや、連絡体制、不具合や障害の切り分け、事象発生時の対応について整理を行っている。
最終的に、組織再編に端を発した新サイトの公開は当初の予定通り完了し、関係者一同、胸を撫で下ろす結果となった。 また、本プロジェクトではリリースを最優先とした為、一部機能の実装が先送りされている。このように公開後に対応が必要な課題については、支援の継続を行った。
短期間のプロジェクトで増える関係者、山積する課題。プロジェクト管理を支えた取り組みとは。
本プロジェクトは無事完了したものの、進行していく中で、当初20名程だった定例会の参加者が、プロジェクトが進むにつれて関係者が増えていき、一時は倍の40名に近づく場面もあった。
関係者が増加することで弊社からの確認事項だけでなく、A社・B社の各部署からの確認や、ベンダーのC社からの技術的な確認等、検討事項が山積みとなり、定例会を延長するケースが多々存在した。週1回実施していた定例会の時間を倍に増やしても足りなかった為、更に、一部関係者のみに影響する議題に関しては分科会を実施することで対応を行った。
また、定例会では毎回必ず課題管理表の読み合わせを実施することで、関係者間で課題進捗のすり合わせを行い、対応事項の抜け漏れを防ぐ取り組みを行ったことが結果としてプロジェクトの進行を支えることとなった。
まとめ
結果として、本プロジェクトは予定通りに完了し、その後クライアントからは「ファーストデジタルに相談しなければ、予定通りのリリースはできなかった。」とのお言葉を頂いた。
どのようなプロジェクトであっても当然のことながら、プロジェクト着手時にはクライアントの理想像(デジタルマーケティングのあるべき姿)を探ることから始める必要がある。本プロジェクトでも定期的にデジタルマーケティング戦略を検討する場で議論を重ね、Web領域でどのように実現するか、といった点を要件に落とし込みつつ、実装へと繋げている。
組織再編のように、事業戦略や提供するサービスだけでなく、社内文化も異なる会社が統合する場合、各社が描いている戦略像は、あくまで「事業再編前のあるべき姿」を継承していて、会社として一体化/一本化した際のケイパビリティまでは考慮されていないといったケースがあり得るので、あるべき姿について早期に合意形成を図ることが最重要となる。
また、プロジェクトの推進・実行を誰が担当するかといったことも重要で、本稿でも触れたが、同様の経験を持つ人員が社内に存在するかどうかだけではなく、通常の業務が存在する中で、全社的なプロジェクトを進めることが出来るかという点については十二分に確認が必要である。プロジェクトの進行が可能な人材がいた場合には、リソース面において当該の人物がプロジェクトに注力できる状態かどうか精査が必要である。
Profile
- 窪田 聡史
- この記事は窪田 聡史が執筆・編集しました。
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