2023.07.26

One to Oneレコメンドは過去の情報?ユーザーが新しい発見を得られない不都合

  • ユーザー満足度向上
  • データ活用
  • レコメンドロジック
  • One to Oneマーケティング
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One to Oneレコメンドは過去の情報?ユーザーが新しい発見を得られない不都合
インプットポイント
  • データを活用したOne to Oneマーケティングの注意点を知ることができる
  • ユーザーには類似コンテンツをレコメンドするのみでなく、新しい気づきを与えることがサービスを魅力的にし、ユーザーの満足度を向上させる

最近では、ほとんどの人がYouTubeやNetflix、ネットショッピングなどを利用し、そのサービスの中であらゆるコンテンツや商品のレコメンド(おすすめ表示)を受けていると思いますが、そのレコメンド、本当にユーザーが興味を持って使ってみたい・見てみたいと思えるようなレコメンドになっているのでしょうか?今回は、One to Oneマーケティングを中心にレコメンドについての戦略を深堀し、さらにユーザーに魅力的な情報発信をする方法について考えてみたいと思います。

最適なレコメンド手法、One to Oneマーケティングとは?

One to Oneマーケティングとは、登録情報、購買情報、WEB行動履歴などから消費者ひとりひとりの特性・傾向からニーズを読み取り、個々に対して最適なコミュニケーションを行うマーケティング活動のことをいいます。これまでは広告やメルマガなどもマス的に発信するしかなかったものが、IT技術の進歩によってユーザーのデータを蓄積・活用することが可能となりました。

ユーザーによりサービスを使いこなしてもらい、より商品を効率的に購入(または継続利用)してもらうために、あるいはユーザーに嫌われるリスクを下げるため(興味のない広告が目に入ると邪魔に感じるような情報もユーザーの興味・状況に合わせて情報発信することで違和感なく受け入れてもらうため)、企業側はより最適なレコメンドを行う手法としてOne to Oneマーケティングを実施していると思います。

One to Oneマーケティングのレコメンド方式

ここで、One to Oneマーケティングを行う基本的なレコメンド方式を確認してみます。

  1. ルールベース
    商品Aを購入したユーザーには商品Bを推奨するなど、予め人がシナリオを決定し、その設定に従って情報をレコメンドする方式。
  2. コンテンツベース
    健康食品Aの購入者に対して類似の効用を謳うサプリメントBを推奨するなど、予め計算されたコンテンツ間の類似性をもとに関連性の高いコンテンツを含む情報をレコメンドする方式。
  3. 協調フィルタリング
    「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といったような、購入・閲覧履歴をもとにしたユーザーや情報間の特徴を元に、対象者と類似したユーザーが購入・閲覧している情報をレコメンドする方式。
  4. ベイジアンネットワーク
    アイテム属性やユーザーの属性、行動・購買履歴等の様々な情報をもとに、複雑に絡みあった因果関係の確率を計算し、対象者の購入・閲覧確率の高い情報をレコメンドする方式。「あなたへのおすすめ」などといった表現で、よりその人向けの情報を発信する。

(参考)https://satori.marketing/marketing-blog/onetoone_marketing/

レコメンド方式を確認してみるとよく分かりますが、ユーザーが登録した情報と過去の行動・購買履歴からしか興味関心を予想できていないので、ユーザーはOne to Oneレコメンドによってこれまでの興味関心に沿った類似情報は得られますが、新たな情報を発見することはできません。

One to Oneマーケティングはユーザーの満足度を下げる?

新たな発見が得られないことで、どのような場合に不都合が起きるのでしょうか?

分かりやすい例でYouTubeのレコメンド機能を考えてみます。YouTubeにログインしホーム画面に行くと各ユーザーに対するおすすめのコンテンツが並んでいます。YouTube利用初期であれば興味のあるコンテンツばかりで楽しく視聴できるのですが、ある程度YouTubeで動画を視聴し終わると、過去の類似動画しか出てこないのでここをいくらスクロールしても「また同じようなコンテンツばかりだな…」と感じてしまうわけです。検索機能を利用しても、ユーザーは知っている範囲の単語しか検索できないので、結果的にこれまでと同じようなコンテンツしか表示されず、「YouTubeは同じようなコンテンツばかりで最近面白くないな」と感じてしまいます。

本当は全く異なる、または隣のカテゴリで新しい発見(動画)が眠っているかもしれませんが、ユーザーが知っている範囲の検索と過去の情報からのレコメンドではこのようなことが起こってしまい、最終的にその”サービスが面白くない”という印象を持たれてしまいます。

「そんなもの、ユーザーが外から新しい発見を得て来てYouTubeで新しいコンテンツを閲覧すればいい話じゃないか」とも思いますが、ユーザーがサービスに求めるレベルは高く、そういった新たな発見までYouTubeのサービス側に求めていることが現状だと思います。実際にリアルの世界では、映画を見に行けばすべての客に同じ映画広告のコンテンツが流れ、こんな面白そうな映画をやるんだ!と新たな発見がありますし、本屋に足を運ぶと自分が探していた本以外にも流行りの小説を見つけたり、隣の本棚に面白そうなジャンルの本を見つけたり、リアルの世界では実現できるような体験をデジタルにも求めているということです。

BtoB事業についても同じようなことが言えると思っていて、例えば企業がWEB上で特定のビジネス課題に関する情報収集を行っていて、その企業にOne to Oneマーケティングをするとしたら、既にその企業が課題に感じている特定のビジネス課題に関する話題しか訴求できないわけです。他にも関連する課題について訴求するシナリオは組めるかもしれませんが、その企業に隠れている課題に対して新しい気づきを与えることは難しいと思います。企業側のユーザーも、今の課題について情報収集できてしまえばもうそのサービスを使うことは(少なくとも当分の間は)無いでしょう。

ユーザーの満足度を満たす情報発信の取り組み

One to Oneマーケティングを否定しているわけではありません。全ユーザーがどのタイミングでも新しい発見のみを求めていることは無く、類似のコンテンツや商品をレコメンドされることで満足度が高い場合も多いと思いますが、それだけでは足りないということです。例えば、新着コンテンツや流行りの商品など、個々に最適化せずマス的なレコメンドを続けていくことも必要だと思いますし、ユーザーの登録情報やWEB上での行動・購買履歴から予想されるロジックのみでシナリオを組むのではなく、実店舗などリアルでの顧客の行動・購買履歴から顧客の特徴量を分析しそれをWEB上でのレコメンドに活かすなど(リアルでは自然に目に入ってくる情報が異なるので、新たな気付きがあった上で購買に至っていると想定)、情報発信が単一的にならない工夫を行う必要があると感じています。

正直、One to Oneマーケティングのシナリオを組むだけでもかなりパワーがいる作業だと思っていて、それ以上にユーザーを満足させるための仕組みを戦略的に考えて実行するなど、相当骨の折れる取り組みだと思います。

マーケティングは、デジタルの世界が広がっていくにつれて企業側で実施すべき施策が増え業務も増加していく一方なので、どの施策をどの優先順位で実施すべきか、システムの実現性なども踏まえ最も効果的な順序で実現できるようステップ的に進めていきましょう。

マガジン編集部
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この記事はマガジン編集部が執筆・編集しました。

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