2023.08.30

組込型金融がもたらす新時代

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組込型金融がもたらす新時代
インプットポイント
  • 最新の組込型金融の動向や戦略を網羅的に把握
  • 金融機関の実務に直接応用できる具体的な取り組み方の示唆の獲得
  • 他社に先駆けての新しい取り組みを始めるための情報と知見を獲得

近年、金融業界において「組込型金融」の言葉を耳にする機会が増えてきました。これは単なる流行や一過性のトレンドではなく、今後の金融サービスの在り方そのものを変革させる可能性を秘めています。従来の金融サービスの枠組みを超え、多岐にわたる業界やサービスとの結合によって、新しい価値を生み出そうとするこの動き。それはまさに、金融機関が新しい時代において、どのように顧客との関係を再構築し、ビジネスモデルを進化させるかの鍵を握っていると考えています。このコラムでは、組込型金融がもたらす新しい波と、それに伴う金融機関における機会について探りたいと思います。

組込型金融の登場背景

近年、金融業界はデジタル化の波を受けて大きな変革期を迎えています。その中で、金融サービスが日常の多様なアクティビティと一体となる「組込型金融」の考え方が注目を浴びています。この背景には、いくつかの要因が考えられます。

  • 消費者の行動変化

スマートフォンやアプリの普及により、消費者の購買行動や情報収集方法が変化しました。例えば、電子決済の普及により、リアル・デジタルでの購入行動における支払い方法が多様化し、従来の方法から大きくシフトしています。

  • 非金融企業の金融サービス参入

大手テクノロジー企業やスタートアップなどが、自社のプラットフォームに金融サービスを組み込むことで、自社サービスと従来の金融機関の提供するサービスを組み合わせる形で提供するような事例が増えています。

  • 技術の進化

オープンAPIの普及やブロックチェーン技術の進展などの新しい技術の進化が金融サービスの提供方法を変える一因となっています。これらの技術は、異なるサービスやアプリケーション間でのデータの連携を容易にし、新しいビジネスモデルの実現を後押ししています。

これらの変化を踏まえ、組込型金融は、金融機関だけでなく、多岐にわたる業界での新たなビジネスチャンスとして注目されているのです。

組込型金融とは?

「組込型金融」、この言葉を耳にすることが増えてきましたが、具体的にどのようなものなのでしょうか。

組込型金融とは、従来の金融機関やサービスだけに留まらず、さまざまな業界やサービスに「金融」を組み込むことで、ユーザーの生活やビジネス活動に寄り添ったサービスを提供する考え方を指します。例を挙げると、Eコマースサイト内での即時融資、スマートフォンアプリ内での保険加入、シェアリングエコノミーのプラットフォーム上での決済サービスなどがあります。

従来の金融サービスは、金融機関の窓口や専用のアプリ・ウェブサイト内で完結していましたが、組込型金融はその境界を超えて様々な場面やサービスに「金融」を取り入れることを可能にします。

このアプローチにより、ユーザーはよりスムーズに、そして自然に金融サービスを利用することができるようになります。一方で、提供側としては、新たな顧客層の獲得や顧客体験の向上、ビジネスの拡大といったメリットが見込めるのです。

組込型金融は、デジタル技術の進化と消費者の行動変化を背景に、今後の金融の主流として期待されています。

組込型金融の実例

組込型金融の理論や背景に加え、より明確に組込型金融の可能性を理解いただくために、組込型金融の代表的な実例をご紹介いたします。

Eコマースサイトにおける融資サービス

大手Eコマースサイトが、購入者に対して商品購入時の分割支払いや融資を提供しています。これにより、ユーザーは商品購入と同時に、必要に応じて資金調達も行えるようになりました。

  • 販売サービスとの連携

不動産や中古車などのポータルにおいて、希望する物件や車を見つけた際、その場で住宅ローンやカーローンのシミュレーションを行えるサービスが増加しています。

  • SNSとの連携

一部のSNSアプリ内で、ユーザー間の送金や、スタンプやギフトの購入を可能にするウォレット機能が導入されています。友人同士の食事の割り勘や、誕生日のプレゼント購入など、日常的なシーンでの金融取引がスムーズになっています。

  • 保険の即時加入

旅行やアウトドアアクティビティの予約サイトで、その場で必要な保険に加入できるサービスが提供されています。これによりユーザーはアクティビティを楽しみながら、安心のサポートも受けられるようになりました。

これらの実例からもわかるように、組込型金融は日常生活の様々な場面において、気づかないうちに私たちの近くに存在し、新しい価値を生み出しています。

組込型金融を実現するテクノロジー

組込型金融を実現させるためには、IT技術の課長が鍵になります。ここでは、その中核となるテクノロジーをご紹介します。

  • API(Application Programming Interface)

組込型金融サービスの提供には、さまざまなプラットフォームやサービスとの連携が欠かせません。その連携において、APIは非常に重要な役割を担います。特にオープンAPIは、サービス間のデータのやり取りを円滑にし、組込型サービスの実現に欠かすことができない技術です。

  • クラウドネイティブ技術

組込型金融を効率的に、かつ柔軟に展開するためには、クラウド上で最適化されたアプリケーションを適宜実行することが求められます。クラウドネイティブ技術は、サービスのスケーラビリティやレジリエンスを高め、迅速かつ柔軟なビジネス変革の実現に必要な技術です。

  • マイクロサービスアーキテクチャ

大きなアプリケーションを小さなサービスに分割して独立して運用・開発することで、迅速な更新や拡張が可能となります。組込型金融では、異なるサービスや機能が連携して動作するため、マイクロサービス技術を導入することで効率的なシステム運用が可能になります。

  • AIと機械学習

顧客のニーズに応じたパーソナライズされたサービスの提供や、リスク評価などの判断に、AIや機械学習が活用されています。これにより、より賢く、効果的な金融サービスの提供が可能となります。

これらのテクノロジーは、組込型金融の実現のための土台となります。今後もIT技術の進化とともに、金融業界の変革も進んでいくことが想定されます。

金融機関における組込型金融の取り組み方

組込型金融は、従来の金融業界の枠組みを超えて、新しいビジネスモデルやサービス展開を促進しています。金融機関が組込型金融に取り組むためのステップを紹介します。

1.組込型金融の意義を理解する

まずは、組込型金融の基本的な概念と、それが金融機関にどのような価値をもたらすのかを十分に理解することが大切です。

2.顧客ニーズに対する理解を深める

金融サービスを他のサービスやアプリケーションと統合することで、どのような顧客ニーズに応えられるのかを明確化する必要があります。アンケートやヒアリングを活用しながら、顧客の具体的なニーズを把握し、本質的な解決策を模索し具体化することが重要です。

3.パートナーシップの構築

金融機関単独で組込型金融を展開するのは難しいため、技術提供者や他業界の企業とパートナーシップを構築し連携を強化することが鍵となります。共同でのサービス開発や相互のAPI提供などを検討することが、新しい価値の創出に繋がります。

4.継続的なイノベーションの推進

IT技術や金融を始めとしたビジネスは日々進化しています。そのため、定期的な市場の動向分析や技術のアップデートが必要です。競合優位性を獲得し維持するためには、社内のイノベーション部隊や専門家の意見を活用して、最先端の取り組みを継続していくことが重要です。

組込型金融の導入は、金融機関に新しいビジネスチャンスをもたらすだけでなく、顧客満足度の向上にも貢献します。戦略的な取り組みを通じて、その可能性を最大限に引き出しましょう。

組込型金融におけるデジタルマーケティングコンサルティングファームとの協業

組込型金融はは、単なる技術的な取り組みではなく、新たな価値を創出しビジネスを変革させるための取り組みであり、顧客の期待に応えるための新しい金融サービスの在り方そのものを見直し再定義するDXの営みそのものと言えます。そのような変革を実現するためには、IT技術・ビジネス両方の知見と戦略的な視点を持ったパートナーとの協業が不可欠だと考えます。

ファーストデジタルは、このような時代の変化に対応するための戦略作りからIT環境の構築・実行までを、企業と一体となって伴走するするパートナーとして、皆様のお役に立ちたいと考えています。顧客のデジタル接点の最適化、最新のマーケティングテクノロジーの活用、そして組込型金融における新たなビジネスモデルの検討。これらの取り組みを通じて、ビジネスの未来を一緒に切り開いていくことが私たちの使命です。

木田 祐輔
木田 祐輔
この記事は木田 祐輔が執筆・編集しました。

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