伝え方が成否を左右。「フレーミング効果」とは?
- インプットポイント
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- フレーミング効果の重要性とインパクト
- 効果的なメッセージを作るためのポイント
マーケティングにおけるコミュニケーションでは、消費者心理を理解した上で、「伝える情報」だけではなく、その情報を「どのように伝えるか」を考慮することが重要だ。
「フレーミング効果」は、まさにその「伝え方」に関する心理学の概念である。フレーミング効果を活用すれば、商品やサービスの価値を最大限に伝え、消費者の意思決定を促すことができるようになる。
本記事では、フレーミング効果の基本や、ICT製品・サービスを例にしたフレーミングのコツをご紹介する。
デジタル変革の時代を支えるマーケティング手法の一つとして、ぜひご活用いただきたい。
フレーミング効果とは
まずは、フレーミング効果の基本的な概念と、その背後にある心理学的要因について解説する。
フレーミング効果とは、全く同じ情報でも、異なる方法や視点で伝えることで、受け手の意思決定や認識が変わってしまう現象を指す。つまり、情報の枠組み=フレームが、その情報の受け取り方を変えるのだ。
例えば、「95%の成功率」と「5%の失敗率」は、数値的には同じ情報だ。だが、受け手の反応は、この2つの伝え方によって大きく変わることが研究で明らかとなっている。
これがフレーミング効果である。
フレーミング効果の背後には、人々が情報を処理する際の心理的な傾向やバイアスの存在がある。
人は複雑な情報を単純化して処理するため、受け取る情報の文脈や枠組み(フレーム)に強く影響される。
また、人は損失を避けるための傾向(=損失回避)が強いとされる。そのため、同じ情報をポジティブなフレームで伝えると、より受け入れられやすいと言われている。
フレーミング効果の理解と活用は、現代のマーケティング戦略において欠かせない。とりわけ現代における情報伝達のスピードや多様性を考慮すれば、フレーミングのスキルはますます重要となるはずだ。
ICT製品・サービスを例にしたフレーミング効果の活用例
フレーミング効果をより具体的にイメージできるよう、ICT分野の商品・サービスを例にとり、活用方法を考えてみたい。
例1. クラウドサービスの特徴を伝える時
オンラインストレージなどのクラウドサービスは、「安全性」や「アクセスの容易さ」などの特性が取り沙汰されるが、これを「99.9%の稼働率」という数字で示すのと、「24時間365日、いつでもどこからでも安全にアクセス可能」という文言で伝えるのとでは、受ける印象が異なる。後者のフレーミングの方が、利用者の日常の中での利便性や安心感を強調することが可能だ。
例2.サービスのプランを提示する時
サブスクリプション型のサービスの価格を伝えるとき、例えば、「月額1,000円」と伝えるのと、「1日あたり約33円で利用可能」と伝えるのとでは、利用者は後者の方が手頃に感じる可能性がある。このように、同じ価格でも提示の方法によって受け取り方が変わる。
例3. AI技術の効果を伝える時
AI技術の導入は多くの企業で進められているが、AIはその特性上、どのような効果が得られるかがイメージしづらい。そのため、導入による利益や効果をどのように伝えるかが大きな課題となる。その場合もフレーミングが有効だ。「AIによる効率化」という伝え方より、「AIを活用して従業員のクリエイティブな業務に専念できるようになる」という伝え方の方が、より具体的に効果や付加価値をイメージさせることが可能となる。
例4. サステナビリティを伝える時
環境への配慮は現代のビジネスにおいて欠かせない要素だ。そのような中、ICT製品やサービスがエコであることを伝える際、単に「CO2排出量を20%削減」というデータを提示するのではなく、「一年で大型車500台分のCO2排出を削減する効果」などと具体的にフレーミングすることで、インパクトをより鮮明に伝えることができる。
このように、フレーミング効果は、商品やサービスの特性を効果的に伝えるため手段として用いることができる。
効果的なメッセージ作成のコツ:フレーミングのポイント
マーケティングの正否を大きく左右するフレーミングだが、その効果を発揮するにはどのようなメッセージを作ればよいだろうか。
以下では、メッセージ作成のポイントをご紹介する。
目的とターゲットの明確化
まず最初に、伝えたい情報の目的とターゲットを明確に定義する。誰にどのような行動や反応を求めているのかを整理することが、最適なフレーミングを行う上での第一歩だ。
情報の選択と整理
情報量が多すぎると、メッセージが伝わりにくくなる。必要な情報を整理/厳選して伝えることで、受け手の理解を促進することができる。
例えば、クラウドサービスのメリットを伝える際は、「安全性」「コスト削減」「アクセス性」などと、ポイントに絞って伝えるとよい。
感情の刺激
人々は合理的な情報よりも、感情に訴えかけるメッセージに強く反応する場合がある。感情を刺激するフレームを採用することで、メッセージのインパクトを高めることが可能だ。
例えば、AI技術に関するメッセージでは、「未来を切り開くテクノロジー」などと、希望や期待感を喚起するのも一手である。
実際の事例やデータの提示
当然のことだが、抽象的な情報よりも、具体的な事例やデータを基にした情報の方が、説得力/信頼性が高まる。
例えば、製品・サービスの販売では、導入によるDXの成功事例を取り上げ、「XX社はサービスの導入で30%のコスト削減に成功」などと、実績を提示するとよい。
フレーミング自体の改善/精度向上
上記までに挙げたポイントは、いわば「初めにどのようなメッセージを作ればよいのか」というものである。
だが、そこにデータ活用を取り入れることで、フレーミング効果をより一層高めていくことが可能となる。どういうことかと言えば、適切にDXを行った場合、マーケティングデータの収集・分析・活用が容易となる。そうすると、ターゲットの反応に基づき、フレーミングをリアルタイムに変更することが可能となるわけだ。つまり、例えば、サイト訪問者の行動データを基に、次回の広告メッセージのフレームを最適化することが可能になる。また、購入履歴に基づき、次の商品をレコメンド/クロスセルする際のフレームをOne to Oneで出し分けることも可能となる。
フレーミング効果を活用した効果的なメッセージングは、現代のマーケティングにおいて欠かせないものだ。ターゲットに合わせ最適なフレーム設定を行い、メッセージの影響力を最大化していただきたい。
フレーミング効果の落とし穴:注意点と避けるべきミス
フレーミング効果は、その影響力ゆえ、使用方法を誤ることで、ブランドや製品の評価を大きく損なう可能性がある。
そこで、フレーミング効果を適切に活用するための注意点と、避けるべきミスについてご紹介する。
情報の過多や過度な装飾
メッセージの伝達において、情報を過度に装飾すると、受け手が重要なポイントを見落とすリスクが高まる。特にICT製品やサービスは、伝えるべき情報の専門性が高いため、シンプルかつ明瞭に伝えることが重要となる。
例えば、「AI技術を採用し、先進的なアルゴリズムを駆使して…」といった情報過多な表現よりも、「AI技術で30%の効率アップ」などと、まずはシンプルに伝えるのがよい。
誤解を招く伝え方
正確さを欠くフレーミングは、受け手に誤解を与える可能性が高く、信頼性の喪失につながる。真実性の担保はもちろんのこと、受け手がどのように解釈するかを考慮することも必要だ。
例えば、クラウドサービスが「100%安全」と伝えてしまうと、一切のリスクがないと誤解される恐れがある。
過度な感情的訴求
先述のように、感情を刺激することには一定の効果があるが、過度に感情的になると、かえって逆効果となることがある。
とりわけICT製品やサービスにおいては、選択/導入に冷静な判断が必要となるため、過度な感情的訴求は信頼性の低下を招きやすい。
例えば、新しいテクノロジーやサービスについて、「ビジネスを救う奇跡の技術」などと表現してしまっては逆効果かもしれない。
ターゲットにマッチしない伝え方
ターゲットの期待やニーズが考慮されていないフレームの場合、ターゲットからの関心が得られないため気を付けたい。
例えば、技術者向けの高度なサービスを、「初心者でも簡単」と伝えてしまうと、ターゲットである技術者からの関心は得られない。
同じフレームの短期間での多用
一時的に注目を集めて短期的な効果を得るためのフレームと、長期的なブランドイメージを構築するためのフレームは、使い分けが必要だ。
例えば、「今だけの特別価格」というフレームは、短期的な売り上げ向上には効果的かもしれないが、長期的に繰り返してしまうと、常に割引が期待されるブランドイメージとなってしまう恐れがある。
フレーミング効果を取り入れる際は、上記の注意点を念頭に置くとよいだろう。
まとめ
フレーミング効果をマーケティングの戦略として活用することは、特にDXが進む現代において、多大な効果をもたらす可能性がある。
とりわけICTやDXの領域では、技術の進化と共に、消費者の意識や期待も常に変化している。
フレーミング効果をうまく取り入れ、DX時代におけるマーケティング戦略の策定にご活用いただければ幸いである。
Profile
- 植野 峻彰
- この記事は植野 峻彰が執筆・編集しました。
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