2023.11.08

ただのデータが戦略やアイデアに変わる。クリティカルシンキング

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ただのデータが戦略やアイデアに変わる。クリティカルシンキング
インプットポイント
  • ビジネスにおけるクリティカルシンキングの重要性
  • クリティカルシンキングの磨き方

DXに伴いデータの活用が進む中、どの情報が真に価値を持つのかを見極めるスキルは必須と言えよう。

このような背景の中、ビジネスで競争力を持つための鍵の1つが、「クリティカルシンキング」の能力だ。

特にマーケティングの領域では、消費者の多様化するニーズを捉え、適切な戦略を立案するために、クリティカルシンキングが欠かせない。

ビジネスのあらゆるシーンで役に立つクリティカルシンキングだが、今回は、マーケティングにフォーカスして、クリティカルシンキングの概要、活用例、そしてスキルの磨き方についてご紹介する。

クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキングは、直訳すれば「批判的思考」である。

ただし、単なる「批判的な」考え方ではなく、「情報や事実、論点などを深く客観的に分析し、適切な判断を下すことを目的とした、批判的な」考え方のことを指す。

概念的な言葉のためイメージしづらいが、以下の2面に分類するとわかりやすいだろう。

1.外部要因を疑う

与えられた情報や前提を疑うこと。具体的には、

  • 見聞きした情報を鵜呑みにせず、その情報の真実性を疑ったり、その情報の奥にある本当の意味を考える
  • 目の前に2つの選択肢があるときに、その選択肢に絞られている根拠や、3つ目の選択肢がないかを考える

などがクリティカルシンキングにあたる。

2.内部要因を疑う

与えられた情報ではなく、情報をうけとめて判断を下す自分そのものを疑うこと。具体的には、

  • 思い込みや偏見がないかを疑い、無意識に持っていた思い込みや偏見に気づく
  • その思い込みや偏見を取り払った場合にどうなるかを考える

などがクリティカルシンキングにあたる。

このように、「どの情報が信頼に足るものなのか」「どの情報が何を意味するのか」「どの情報を基に意思決定をするべきなのか」を見極める際に礎となる力が、クリティカルシンキングだ。

情報やデータが多様化する現代のビジネスにおいては、特に重要なスキルとなる。

なぜマーケティングでクリティカルシンキングが必要なのか

ビジネスの中でも、とりわけ人や思考を相手取るマーケティングの分野においては、情報をそのまま受け止めると、誤った判断を下してしまう恐れがある。

そのようなリスクを回避するためには、情報の背後にある原因や背景、将来に与える影響などを考察し、それに基づいて意思決定を行うことが重要だ。

本章では、マーケティングにおける具体的なシーンをイメージしながら、クリティカルシンキングがどのように役立つのかを見ていこう。

Case1:問題の冷静な分析

クリティカルシンキングは、目の前で起きている事実や直面している問題を短絡的に受け止めるのではなく、正しく分析し、適切な判断を下すのに役に立つ。

例えば、都市部のとあるカフェ(自店)のオーナーをしていたとしよう。

ある日、競合となる新しいカフェ(競合店)が近くにオープン。ほどなくして、自店の売上は少しずつ落ち始めた。競合店はオーガニックを強く打ち出しており、多くの若者でにぎわっていた。

この時、オーガニックがトレンドと考えて、短絡的に自店のブランディングやメニューをオーガニック路線に切り替えるのではなく、

  • 「オーガニックが今のトレンドなわけではなく、近隣の若者がただ単に『新しくできたカフェであること』に惹かれているだけなのではないか」
  • 「そもそも、売上減少の原因は競合店ができたことにあるのか。自店の接客等、他の要因も関係しているのではないか」

等と考えてみよう。

Case2:市場分析における深い洞察

クリティカルシンキングにより、表面的なデータや情報を超え、そのデータの奥にある本当の意味を見出すことが可能となり、市場のニーズや変化に適切・迅速に対応するための戦略が練りやすくなる。

例えば、スマートホームデバイス市場で新商品を投入するべく市場調査を行っていたとしよう。

その中で、「中高年層の消費者はスマートホームデバイスに対して興味が薄い」という情報をキャッチ。

この情報を鵜呑みにして、ターゲットを若年層に決め打ちするのではなく、

  • 「中高年層にも興味はあるのではないか」
  • 「デバイスの設定や操作に不安がハードルとなり、一見すると興味がないかのようなふるまいを市場で見せているだけなのではないか」
  • 「ならば、高機能でありながら、設定をプリセットすることで、セットアップや操作性面でのハードルを取り払ったデバイスにニーズがあるのではないか」

等と考えてみよう。

Case3:マーケティング施策の最適化

クリティカルシンキングにより、広告やコンテンツ等のマーケティング上の各取り組みを再評価し、効果向上やコスト削減といった最適化ができるようになる。

例えば、スキンケア製品の売り上げを増やすために、フォロワー数の多いインフルエンサーをメインに起用し、彼らの投稿の「いいね」の数を指標にインフルエンサーマーケティングを実施していたとしよう。

ここで、フォロワー数の多さやいいねの数が重要という先入観を疑い、

  • 「フォロワー数の多いインフルエンサーでいいねの数を集めることは、認知の獲得にはつながっても、製品の購入・売上拡大にはつながっていないのではないか」
  • 「購入・売上拡大を目的とするなら、投稿後にアクセスしてきたユーザーの購入意欲やブランドへの興味が重要なのではないか」
  • 「ならば、フォロワー数は少なくても、フォロワーとのつながりが強いマイクロインフルエンサーが、コスト面でも効果面でも適しているのではないか」

等と考えてみよう。

総じて、クリティカルシンキングは、競争力のある戦略を立て、マーケティングを効果的・効率的に行うのに役立つスキルと言える。

クリティカルシンキング力を磨くには

ビジネスやマーケティングの様々なシーンで役立つクリティカルシンキング。

本章では、そのクリティカルシンキングのスキルを磨くための方法をいくつかご紹介する。

1.日常編:疑いと更なる問いを繰り返す

日常の中で起きたことに疑問を持ち、問い続けることが、クリティカルシンキングを鍛える基本となることは言うまでもない。

そのためにはまず、見聞きした情報に対して、

  • その情報の真偽性を考える(誰がどのようなデータに基づき言っていることなのか)
  • その情報の本当の意味を考える(それは何かの表面的な表れにすぎないのではないか、だとしたら何の表れなのか)

といったことを習慣化するとよい。

2.日常編:異なる情報源や反対意見に目を向ける

特定の情報や特定の人物の意見が一見正しく見えても、それに固執せず、異なる情報源を探す癖をつけてみよう。また、「Aである」という情報を目にしたら、「Aではない」「Bである」という反対意見についても積極的に調べてみるとよい

3.日常編:矛盾を両立させてみる

一見矛盾しそうな2つのことを考え、それを両立させるにはどうするか、という頭の体操も効果的だ。 例えば、「ミスを減らしたい」と「かける時間を減らしたい」を両立させるにはどうするかを考える、等である。

4.日常編:一日の判断を振り返る

一日の終わりに、その日取った行動や下した判断について振り返る時間を設けることも、クリティカルシンキングの向上につながるのでおすすめだ。

外部要因だけに意識を向けるのではなく、一日の振り返りにより、内発的な行動にも意識を向けることで、自らが無意識に持っている思い込みや偏見に気づくきっかけとなる。

5.ビジネス編:ブレインストーミング

ビジネスシーンでクリティカルシンキングが求められる顕著なシーンと言えば、何と言ってもブレインストーミングだろう。意見やアイディアを自由に出し合い、目の前にある選択肢以外にも選択肢がないかを考える中で、クリティカルシンキングのスキルが磨かれる。

6.ビジネス編:マーケティングフレームワーク

マーケティングのフレームワークを用いて、自社のビジネスについて分析し、仮説を立案をしてみるのもよい。

例えば、SWOT分析。強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を明確するには、クリティカルシンキングによる多角的な視点が求められるため、うってつけである。

なお、角的な視点という意味では、一見自社とは全く関わりのないビジネス領域における1社をイメージし、その企業になり切り、勝手にSWOT分析してしまうのもおすすめだ。

7.ビジネス編:ロジックツリー

ビジネスの中で難解な問題に直面した際に用いるロジックツリーもおすすめだ。大きく複雑な問題を、小さなパーツに分解し、それぞれの要因や影響を論理的に整理することで、根本原因を明確にする。こうしたプロセスで問題を解決に導くロジックツリーは、まさにクリティカルシンキングを磨く絶好のツールと言える。

以上を通して、ビジネスや日常の中で磨かれたクリティカルシンキングのスキルは、競争力の源泉になるだろう。

初めのうちは意識的で構わない。意識的な行動は、積み重なると無意識下で行える習慣となり、ビジネスの現場でも、瞬時に適切な判断と効果的なアクションをとることができるようになる。

まとめ

ビジネスでは、これまでの前提や入手した情報を問い直し、適切な戦略や施策を企画・実行する能力が必要となる。

消費者の真のニーズや市場の動向を的確に把握する必要のあるマーケティングの分野においては、特に重要といえる。

社会が目まぐるしく進化・変容し続ける今、我々も絶えず新たな知識を身に着け、スキルをアップデートし続ける必要がある。

中には、今重要ではあるが、時が過ぎれば重要性が薄れる一過性の知識やスキルもあるだろう。

だがクリティカルシンキングは、情報が多様化する社会では、ますます重要性を増していくスキルの1つと言える。

Profile

植野 峻彰Senior Consultant
慶應義塾大学卒業後、服飾関連の製造小売企業に入社。その後、化粧品関連の商社にて、主にマクロを駆使した社内外のRPA、およびDXプロジェクトに参画。2021年から株式会社ファーストデジタルにジョイン。
植野 峻彰
植野 峻彰
この記事は植野 峻彰が執筆・編集しました。

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