会議の「つまらない」を「生産的」に、「ぎくしゃく」を「アイデアフル」に変えるコツ
- インプットポイント
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- ミーティングの生産性を高める心理学的アプローチ
- 話し手・聞き手・ファシリテーター、それぞれの実践すべきことがわかる
意思決定や情報共有のために欠かせないミーティング。
ミーティングは、しばしば「意見が出てこず活発な議論がなされない」「意見が出ても着地しない」「時間がもったいない」などと、負の側面が取り沙汰されることが多いテーマである。
こうした問題を解決し、ミーティングの質を向上させるには、心理学によるアプローチが有効だ。
本稿では、
- 良質なアウトプットを伝えるには・受け取るには
- 判断のスタミナを切らさず生産性を高めるには
- 活発な議論を建設的に行うには
という3つの切り口で、ミーティングのクオリティの向上につながるポイントをご紹介していく。
良質なアウトプットを伝えるには・受け取るには
ミーティングの成果は、「聞き手が話し手からいかに良質なアウトプットを受け取るか」にかかっている。
これはさらに、
- 話し手が聞き手に良質なアウトプットを届けること
- 聞き手が話し手から良質なアウトプットを引き出すこと
の2つに分解可能だ。
この章では、話し手のスキルとして「非言語コミュニケーション」、聞き手のスキルとして「アクティブリスニング」をご紹介する。
【Point①】非言語コミュニケーション
パレートの法則に従えば、話全体のうち、本当に重要な部分は2割で、その2割が伝われば、話全体の8割が伝わったことになる。
逆に、重要な「2割」を受け止めてもらうことができなければ、コミュニケーションは失敗といっても過言ではない。
ここで注意すべきは、聞き手が話し手に向けられる「注意力」や、問いかけに下せる「判断力」は、有限のリソースであるということだ。
緩急なく「10割」すべてをのっぺりと喋っていては、聞き手のリソースが枯渇し、話に注意を向けてもらえなくなる。
そこで有効なのが、声のトーン、話す速度、身振り、表情、視線、姿勢といった非言語コミュニケーションである。
結論など、重要な「2割」を伝える際に、非言語コミュニケーションで緩急をつけてみよう。
本当にフォーカスすべき部分に聞き手の注意を集めることができ、「8割」の成果が得られるはずだ。
【Point②】アクティブリスニング
一方で、聞き手のスキルも重要だ。
ミーティングで特に役立つのが、話し手の表面的な言葉だけでなく、その背後にある感情や意図を理解しようとする聴き方、「アクティブリスニング」である。
具体的には、以下の3点を意識するといい。
- 話し手のメッセージを要約する:話の要点を自分の言葉で要約し、確認することで、メッセージを正しく理解していることを示す。
- 聞きながらフィードバックする:「ええ」「なるほど」といった言葉や、うなづくなどの肯定的なフィードバックを積極的に行う。
- 否定的な反応を抑える:話し手が話し終わるまでは、否定したり異なる意見を述べたりすることを避ける。
話し手の考えを効果的に引き出すだけでなく、ミーティング参加者間での認識の齟齬を回避することができるのでお勧めだ。
判断のスタミナを切らさず生産性を高めるには
「人間が一日に下す判断は、多い時には35,000回にも及ぶ」とは有名な話である。
そんな判断だが、先述の通り、人間が一定期間内に良質な判断を下すことができる回数には上限がある。
つまり有限のリソースなのである。
ミーティングに話を戻そう。ミーティングは、結論を出すためにまさに判断を行う場だ。
当然、論点が発散すればするほど、時間が長引けば長引くほど、必要な判断の量も増える。
その結果、参加者の集中力や判断力が低下し、ミーティングの生産性や創造性の低下が起きてしまう。
そこでアジェンダである。基本中の基本だが、だからこそ生産性の担保には欠かせないものと言える。
【Point③】アジェンダの設定
必要な判断の量を減らし、生産性のあるミーティングを行うには、アジェンダの設定が有効だ。
アジェンダに組み込む内容は以下の通りだ。
- ミーティングのゴール・目的
- そのゴールのために議論すべきこと(=議題)
- 各議題に割り当てる時間
上記を明記し、ミーティングの冒頭で共有する。
そうすることで、議論を収束させ、必要な判断の量を最小限にとどめ、ミーティングの生産性を高めることができる。
もし議論が発散しそうになったら、ゴールに立ち戻り、「その話は、ミーティングのゴールに資することなのか」と、ジャッジを挟むといい。
活発な議論を建設的に行うには
ミーティングでは、多様性に富んだ意見に基づき、活発に議論が行われる必要がある。
また、対立意見が出た際に、建設的な議論に基づき着地点を探る必要もある。
そのためには、グループダイナミクスを理解し、ミーティングをマネジメントしてみるといい。
グループダイナミクスとは、簡単に言ってしまえば、集団に対して個人が与える影響や、個人が集団に対して与える影響のことだ。
例えば、集団の中に、強い影響力を持つ支配的な個人がいたとしよう。
するとその集団では、多様な意見が出づらくなり、支配的な個人が持つ意見が色濃く反映されてしまう傾向がある。
議論が交わされることなく、結論が浅はかに出されてしまうことから、「集団浅慮」と呼ばれる現象だ。
これがグループダイナミクスの一例である。
グループダイナミクスは、うまく管理・活用することで、むしろミーティングの質を高めることができる。
本章では、特にミーティングに役立つ「意見の多様性の尊重」と「対立のマネジメント」について紹介する。
【Point④】意見の多様性の尊重
多様性は、集団の創造性を高め、より適切な意思決定を可能にする。
組織に多様性が求められる理由については、以下のコラムで解説しているので、ご参考いただきたい。
(参考:組織に多様性が必要な理由~DXコンサルが目指す組織像~)
ただ、ことミーティングの場合は、たとえ集団内の「個々人」に多様性があっても、「個々人から出てくる意見」に多様性がなければ意味がない。
「意見の多様性」とは、個々人が多様であるだけでなく、そこから多様な意見が出てくる様を指す。
もしミーティングで意見の多様性が見られない場合、以下のことを試してみるといい。
- 匿名でのミーティング:支配的な個人の意見に左右されることがなくなり、先述の「集団浅慮」を回避できる。
- ミーティング前の個人ブレスト:ミーティング最中のブレストは、否定的なフィードバックを受ける恐れから、たとえ個人が案を持っていても表明しづらくなる傾向にある。そこで、案は事前に各自で考え共有しておき、ミーティングは、集まった案を揉む場とする。
これらを取り入れることで、各参加者が自由に意見を表明できる環境が整い、多様な意見が出やすくなるはずだ。
【Point⑤】対立のマネジメント
逆に、とりわけ意見の多様性が担保された集団では、対立が生まれるケースもある。
その際に必要なのが、対立をマネジメントするファシリテーションである。
議論が紛糾した際は、以下の観点でファシリテーションしてみよう。
- ミーティングのゴールやチームの目標を再確認する:ミーティングのゴールや、そもそものプロジェクトやチームとしてのゴールを今一度提起することで、マクロな視点で妥協案や着地点を見つける。
なお、一見矛盾する2つのことは、見方を変えれば矛盾しておらず両立可能で、思いもよらなかった創造的なアイデアにつながることもある。
これをヤヌス的思考というが、是非、対立意見が出た際も、リスクではなくチャンスととらえ、ファシリテーションしてみよう。
まとめ
本稿では、心理学を切り口に、ミーティングの質を向上させるためのポイントについて触れてきた。
ご紹介したポイントを組み合わせることで、参加者は、よりミーティングにコミットし、建設的・創造的な議論を取り交わすようになるはずだ。
組織全体の意思決定効率化と成果向上につながることを願っている。
Profile
- 植野 峻彰
- この記事は植野 峻彰が執筆・編集しました。
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