ロイヤルティマーケティングのPDCAに役立つフレームワークとは?
- インプットポイント
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- ロイヤルティマーケティングのPDCAに役立つフレームワーク「ロイヤルティMAP」
- 「ロイヤルティMAP」の前提となる考え方
- 「ロイヤルティMAP」を活用するメリット
現代の消費者行動は変化しました。昔は、さまざまな制約により、たとえ顧客ロイヤルティがなくても、持続的にリピート購入する顧客が存在しました。しかし、現代の消費者は、無限の選択肢を得ています。さまざまな制約がなくなったとき、商品・サービスを選択する拠り所が「顧客ロイヤルティ」です。そのため、ロイヤルティマーケティングは現代のビジネスの根幹ともいえ、重要性はますます増しています。
過去3回に渡り、ロイヤルティマーケティングの基礎知識や、マインドロイヤルティの測定方法、ロイヤルティマーケティングの具体戦略について、ご紹介してきました。
ロイヤルティマーケティングの施策をいざ実施すると、以下のようなお悩みを持つご担当者は多いようです。
- 施策で目指すべきゴールがクリアにならない。
- 実施した施策に対して、きちんとした効果がでたか評価できない。
- 一過性な施策になってしまい、PDCAが回せない。
今回は、そういったお悩みに対して、ロイヤルティマーケティングの施策/戦略を検討する・評価する・PDCAを回す際に役立つ「ロイヤルティMAP」というフレームワークをご紹介していきます。
「真のロイヤルティ」という理想像
「ロイヤルティMAP」というフレームワークをご紹介する前に、前提としての考え方を先に説明します。
過去の記事では、「ロイヤルティマーケティングでは、購買行動に表れるアクションロイヤルティ(※1)だけでなく、顧客の心理的結びつきであるマインドロイヤルティ(※2)の両面を意識する事が重要」という話をしてきましたが、これらを組み合わせた「顧客ロイヤルティの分類」が前提となる考え方となります。
※1. アクションロイヤルティ:ユーザーの購買行動。具体的には、リピート購入、定期購入、他のブランドの追加購入といったアクション。
※2. マインドロイヤルティ:企業やブランドに対する顧客の深い愛着や感情的な結びつき
※1・2については、以下の記事で詳しくご紹介。
Alan S. Dick氏とKunal Basu氏が1994年に発表した顧客ロイヤルティに関する論文の中で、この2つのロイヤルティの高低の組み合わせによって「真のロイヤルティ」、「潜在的ロイヤルティ」、「見せかけのロイヤルティ」、「ロイヤルティなし」と4分類する考え方を示しました。(図1参照)
各ロイヤルティ分類の詳細については、以下の通りです。
①真のロイヤルティ:アクション・マインドの両方のロイヤルティが高い
この象限に位置する顧客は、ブランドに強い感情的な結びつきを持ち、積極的な行動を起こします。たとえば、ブランドの新商品を熱心に待ち望み、他の競合製品よりもそのブランドの商品を選好する顧客です。企業やブランドが最も重視すべき顧客層(ファン層)といえます。
②潜在的ロイヤルティー:マインドロイヤルティは高いが、アクションロイヤルティは低い
顧客はブランドに対して一定の関心を持ち、潜在的な需要が存在しますが、まだ行動に移していない状態です。例えば、友人から良い評判を聞いたブランドに興味を持ちつつも、実際に購入に至っていない状態です。
③見せかけのロイヤルティ:アクションロイヤルティは高いが、マインドロイヤルティは低い
顧客は一時的な需要や外的要因によって行動していますが、本質的なロイヤルティはありません。たとえば、特別なセールやキャンペーンが行われている時にのみ商品を購入する顧客です。他にも、会社に行く前にコーヒーを買う人が、通勤途中にあるという理由だけで、特に好きでもないショップで、ほぼ毎日購買している状態がこれにあたります。
たまたま買いやすい、利用しやすいからといった理由で顧客となっていますが、そこに心理的な強い結びつきがあるわけではありません。そのため、状況が変われば簡単に別の選択をするおそれがあります。
④ロイヤルティなし:アクション・マインドの両方のロイヤルティが低い
この象限に位置する顧客は、ブランドに対して関心が低く、行動も起こさず、感情的な結びつきも乏しい状態です。例えば、新しいブランドの製品を見ても興味を持たず、他の代替品を選ぶ可能性が高いです。
この4つの分類で、ロイヤルティマーケティングのミッションは、「真のロイヤルティ顧客の割合をいかに増やしていくか」となります。
「ロイヤルティMAP」というフレームワーク
前章の顧客ロイヤルティの4つの分類の前提を踏まえ、「ロイヤルティMAP」というフレームワークをご紹介します。
「ロイヤルティMAP」とは、アクションロイヤルティとマインドロイヤルティの状態を数値化して表にプロットしたものとなります。それぞれのロイヤルティは、企業やブランドのビジネスモデルやビジネス環境に合わせて測定指標が設定され、購買履歴や顧客アンケートにより測定されます。以下図2は、ある通販企業の「ロイヤルティMAP」の一例です。
縦軸のアクションロイヤルティは、顧客の購買データから、未購入顧客(※3)・初回お試し顧客・初回リピート顧客・継続リピート顧客の4つに区分しています。そして、横軸のマインドロイヤルティは、顧客アンケートによるNPS(※4)調査結果から、認識・好意・絆の3つに区分しています。
※3. 未購入客:購入経験や商品体験がないが、メールアドレス等の個人情報が取得できている顧客。CRMアプローチが可能な潜在顧客という観点で区分に設定。
※4. NPS:Net Promoter Scoreというマインドロイヤルティ測定の為の調査指標。
以下の記事で詳しくご紹介。
マインドロイヤルティを可視化するNPS(ネットプロモータースコア)とは?
前章でご紹介したロイヤルティ4つの分類よりは細かい区分となっていますが、「真のロイヤルティ顧客割合の最大化を目指す」という点では考え方は同じです。このケースでは、「右上の❶の顧客割合の最大化」が目指すべきミッションとなります。そのミッションを念頭に置いた上で、「現状の顧客ロイヤルティ状態の測定」や「ロイヤルティマーケティング戦略/施策の立案」等を実施することになります。
「ロイヤルティMAP」を活用するメリット
先程ご紹介した「ロイヤルティMAP」ですが、活用によるメリットは3つあります。
1.ゴールの設定のしやすさ
通常、顧客ロイヤルティ評価は曖昧になりがちですが、現状態が定量的に可視化されるので、施策のゴールや目指すべき理想像の設定がしやすくなります。「ロイヤルティMAP」により、自社が目指すべき真のロイヤルティ顧客がどのセグメントの顧客なのかが明確になります。
2.戦略/施策プランニングのヒントの獲得
可視化された顧客ロイヤルティ状態を分析することで、現状のロイヤルティマーケティングの強み・弱みを探すヒントとなる。また、顧客インサイト傾向の仮説設定もできるので、コニュニケーションの方向性の示唆に役立ちます。
ロイヤルティマーケティングでは、アクションロイヤルティとマインドロイヤルティのどちらの育成に向いているかの違いが戦略/施策毎にあります。(※5)。そのため、「ロイヤルティMAP」上のどのセグメントの顧客をメインターゲットとし、どの戦略/施策によって、どの方向のセグメントまで育成するかのような検討が、「ロイヤルティMAP」を活用することで可能になります。
※5. ロイヤルティマーケティング戦略が「どちらのロイヤルティに寄与しやすいのか」については、以下の記事で詳しくご説明。
ロイヤルティマーケティングを実践するには何をすればいいのか?
3.PDCAに繋げる施策の評価基準の獲得
施策前後で測定した「ロイヤルティMAP」を比較することで、数値の変化に施策がどの程度寄与したかの分析が可能となります。但し、長期間観測しないと明確な差がでなかったり、ロイヤルティマーケティング施策以外の施策や環境の影響が出たり、すぐに直接評価しづらいケースもあります。その場合、長期間の定点観測や他の施策・環境ふまえた総合的評価が必要です。
いずれにせよ、今後の施策のPDCAを回す重要な評価基準を定量的データで獲得ができます。
まとめ
今回は、ロイヤルティマーケティングの評価とPDCAを回す際に役立つフレームワークである「ロイヤルティMAP」についてご紹介してきました。現状の顧客ロイヤルティ状況を「ロイヤルティMAP」に落とし込むことで、アクションロイヤルティとマインドロイヤルティの両方を総合的に評価し、顧客の真のロイヤルティを把握し、戦略を立てることができます。ロイヤルティマーケティングを実践していく際に、今回ご紹介した「ロイヤルティMAP」が参考になれば幸いです。
- 田中 瑞樹
- この記事は田中 瑞樹が執筆・編集しました。
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