【書評】コーチングの手法と実践がよ~くわかる本
- インプットポイント
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- コーチングの手法とその実践方法がわかる
- 心理的安全性を高め自走する組織作りのヒントがわかる
- 自己成長のための取り組みのヒントがわかる
人々のライフスタイルが大きく変わる昨今では、従来のビジネスモデルが通用しなくなり、大きな変革が必要となったり、テレワークや副業の解禁が加速することで社員のエンゲージメントも低下傾向にある。この激動の時代に、経営者や管理職の方々は日々大きなプレッシャーと闘っていることと思う。
この先行き不透明な時代、メンバーをリードして明るい未来を創っていかねばならないリーダーに必要なものは何だろうか?……本書では、コーチングを活用して人の可能性を最大限引き出す手法について解説されている。
【書籍の特徴】コーチングの活用場面と活用効果、さらに実践で起こりうる想定シーンでの対応方法まで理解でき、コーチングの手法を現場で導入する指南書として活用できる
本書では、コーチングとはどういうものかを体系的にも具体的にもよく理解できる内容となっており、コーチング初心者が初期に読む1冊として有益な内容となっている。また、ビジネスシーン含むあらゆる場面での活用術が記されており、コーチングを取り入れたコミュニケーションの重要性・活用性を学ぶことができる。
【目次と要旨】コーチングとは、相手に興味を持ち、相手を主役にした会話をすることで、自分の中に持っている答えを導き出し、自発性/自己責任意識を持たせる取り組みである
コーチングは、相手の能力や気力を引き出し、自己成長や自発的な行動を促すコミュニケーション術である。まずは相手が話しやすい環境(場所・空気感・人員)を作った上で、相手に興味を持ち、相手を認め、相手への思い込みを捨てて、相手の可能性に目を向けて会話をすることが重要である。相手の中にある答えをコーチングによって引き出し、一緒に課題・解決策を見つけ目標を立てることで、相手本人も納得のいく結果となり、自発性や自己責任意識を持つことができる。また、自分自身を向上させるために、自分を見つめなおしポジティブなセルフイメージを作ることで、周囲とのコミュニケーションも円滑になり、ビジネスもプライベートも豊かな方向へと変換していく。
第1章 どんな時代が来ても生き抜ける力とは?
社会が取り巻く環境が大きく変化し見通しを立てることが難しい、これからのニューノーマル時代には、以下の3つの力が必要となる。
・場づくりの力
みんながオープンマインドでのびのびと発言できる環境づくり。心理的安全性の確保が重要となる。
・人を活かす力
ビジネスで成果を上げるには、自分よりもまわりの仲間に意識をフォーカスすることが大切。仲間を活かすため、自分で考えさせる黒子になる必要がある。部下には圧をかけるのではなく期待をかける。
・自分を整える力
部下との関係も職場の環境づくりも出発点は自分。自分を客観視し、習慣を知り、生き方や役割を考える必要がある。
第2章 コーチングとは?
他人に相談しても有効なアドバイスが得られないことがあるが、寄り添って共感的に聴いてくれる人がいると、相手にわかるように伝えようとするので頭の整理ができ、問題の本質や忘れていたリソースに気付くことができる。効果的な聴き方をすることで、人が自分の中に持っている答えを引き出すことができる手法がコーチングである。相手の可能性に目を向け、相手を認めることがコーチに必要な心構えとなる。
第3章 コーチングの手順
コーチングは、基本的に以下の5ステップで進める。
①安心&リラックスできる場所・雰囲気を作る
②テーマを決めて現状をヒアリング
③理想の状態、目標をヒアリング
④可能な限りのリソースを教えてもらう
⑤行動計画を立てる
第4章 コーチングの基本スキル
コーチングで成果を上げるには、いかにクライアント(コーチングを受ける側)が心を開いて率直に話し、自分自身との対話を深めるかが大きなポイントとなる。以下の方法を実践することで、効果的な質問・話しやすい環境づくりを行う。
・ページング&ミラーリング:ノリを合わせて安心感を与える
・承認のスキル:相手を認めて強みに目を向けてもらう
・フィードバック:見たまま、感じたままを伝えて気づいてもらう
・傾聴と質問:頭を整理し発想を広げる
第5章 コミュニケーションの基礎づくり
ビジネスや日常生活でもコーチングスキルは効果を発揮する。先入観を手放して相手に関心を持ち、とことん聴く姿勢を持つ(自分の意見や別の考え事は空っぽにする)ことで、より良い人間関係を構築することができる。また、第1章で説明される「3つの基本スタンス」を意識し相手の力や可能性を信じて相手に向き合うことで、オープンで豊かな関係を作り、相手の新たな魅力を発見し、相手の能力発揮を促進することができる。
第6章 上司・部下間のコミュニケーション
コーチングを活用し、部下の自発性を高め、能力を引き出し、成果を上げることができる。上司は、過剰な先入観や思い込みを無くし、部課に対して好奇心を持って問いかけることで部下の意見を引き出すことができる。部下には、理想と現状を語らせ(イメージを具体化)、リソースに気付かせ、物事を自分事化させることで部下の自発性を上げることができる。
第7章 営業・接客・サービス職向け活用術
コーチングはセールスパーソンやサービス業の人にとっても武器になる。まずは、顧客とノリを合わせて自分らしく話せる環境を提供し相手を認め肯定的な会話を行うことで、顧客にとって安心・安全な場を提供する。さらに、勧める商品やサービスがもたらす明るい未来や自発性を大切にした会話を行うことで、相手に役立つ商品・サービスの提供を行うことができる。人は、誰かから指示命令されたことよりも、自分の口から出た言葉に一番強く影響されるものである。
第8章 教育現場・子育て向け活用術
幼い頃から大人に大切にされ、可能性や強みに焦点をあてて育てられた子は、自分の資質を活かしてのびのびと生きていくことができる。大人は、子どもの自己肯定感を高め生きることが素晴らしいと感じられる価値観を育成し、自立した大人に育てるために、以下の点に取りくむ必要がある。
・存在を認める:子ども一人一人をちゃんと見ていることを伝える。
・自分の力に気付かせる:本当に困ったときだけ大人が手を出し、基本は子どもの自主性を尊重して自身で達成できる感覚を育てる。子どもの可能性を信じ、強みや魅力を承認する。
・主体性を持たせる:どんな環境や状況でも、工夫次第で上手くやっていける・楽しめるということを体験させる。
子どもは幼い頃から両親とのコミュニケーションや、両親と他の人たちのやり取りがその子のコミュニケーションスタイルのマニュアルになっていくので、私たち大人は自らを一度振り返ってみる必要がある。
第9章 発想力を豊かにするコーチング
チャレンジングな仕事を前にすると、結果が出せるだろうか?というプレッシャーや想定外のリスクに対する恐れから前向きに考えられないことがある。そういう時は、過去の経験の中から応用できるリソースを引き出させ、物事を見る角度や切り口を変えることで意欲を引き出すことができる。さらに、立場を変えて(他の誰かになりきって)考えさせることで、思いもよらないアイディアが出ることがある。こういったコーチングを行うことで、メンバーのモチベーションをアップさせ、仕事を前に進ませることができる。
第10章 自分を向上させるために
コーチングという対話を通じた自己洞察の時間を持ち、セルフイメージをネガティブからポジティブに変革することで、自身の行動を変えることができる。また、自分が実現したいことを周囲の人たちに対して宣言すると、夢や目標の実現スピードが上がる。コーチングではクライアントが毎回、自分で行動計画を考え、それを実行することを宣言する。言葉にすることで潜在意識の中に自分のビジョンをしっかりインストールし、自己責任意識を持つことができる。
第11章 コーチングを生み出した心理学・カウンセリング手法
コーチングの技法には、米国で広く用いられている短期家族療法をツールとするものがたくさんある。以下にその例を記載する。(本書には他の手法も記載されている)
・来談者中心療法:無条件の受容、共感的理解をベースとした手法。
・ブリーフセラピー:問題の原因ではなく、それを引き起こしているシステムや相互作用にアプローチするメソッド。
・アドラー心理学:トラウマの存在を否定し、「問題」は自分が無意識のうちに望んで引き起こしていると考える。
第12章 コーチが学んでいる心理学メソッド・関連手法
プロコーチは、よりコーチングの成果を上げるため、クライアントとの対話をより豊かにするもの、クライアントがより深く自分と向き合うためのものなど、様々なメソッドを学んでいる。以下にその例を記載する。(本書には他のメソッドも記載されている)
・アファメーション:「肯定的自己宣言」を習慣的に行う方法。「私はとても豊かです」といった望ましい状態を日常的に唱え、実現することを目的とする。
・ストレングス・ファインダー:34個の強みのうち、優位を占める5つを見つけて伸ばしていくことを推奨するメソッド。
・インナーチェンジングセラピー:「性格は主に幼い頃両親から愛されるために選択した決断がベースになっている」という考え方に基づく手法。決断の原点を知り、抑圧していた感情を開放し言動を変化させる。
【感想】コミュニケーションの重要性を再認識できる
コミュニケーションが重要なことなど全ての人が知っていることだが、どういうコミュニケーションをすればいいかを深く考えたことがある人は少ないのではないだろうか。コーチングは、ある一つの技術というよりかは、基本的なコミュニケーション全体のあり方が指南されているように感じた。また、今の働き世代(特に若い世代)は自身の成長も余儀なくされる中、自分を見つめなおし、できること・持っているものを整理し、仕事を自分ごと化し、課題と目標を見つけていく作業は個々の取り組みとして非常に重要となる。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が重要視され、多種多様な組織開発がされる今、社内・社外ともにコミュニケーションがより重要となっていると考えられる。私たちは、どういった会話をして様々な意見を引き出し、社員のエンゲージメントを高め、円滑な組織運営や自己成長を行うことができるだろうか?そのヒントがコーチングにあると感じた。
- マガジン編集部
- この記事はマガジン編集部が執筆・編集しました。
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