【DXマガジン】ラテラルシンキングとは?水平思考で革新的アイデアを生み出す方法
- インプットポイント
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- ラテラルシンキングを短時間でマスターできる。
- 創造力を養う為の思考法を学べる。
私たちは日々、様々な問題に直面し、解決策を模索しています。しかし、従来の思考法だけでは、革新的なアイデアや斬新な解決策を生み出すことが難しい場合があります。そこで注目されているのが「ラテラルシンキング」です。
ラテラルシンキング(水平思考)とは、既存の枠組みにとらわれず、異なる角度から物事を見る思考法になります。1方向に掘り下げて深く考える論理的思考(垂直思考)とは異なり、横方向に思考を広げて多角的に考えることにより、新しい発想や解決策を生み出すことが可能になるのです。
本稿では、革新的アイデアを生み出すのに役立つラテラルシンキングの本質と実践方法について深く掘り下げていきます。
目次
第1章:ラテラルシンキングの基本原理
第2章:ラテラルシンキングのメリット
その1:創造性の向上
その2:柔軟性の向上
その3:視野の拡大
第3章:ラテラルシンキングのデメリット
その1:効率性の低下
その2:実現可能性の問題
その3:評価の難しさ
第4章:ラテラルシンキングの実践方法
第5章:ラテラルシンキングを活用した事例紹介
第6章:ラテラルシンキングを鍛えるトレーニング方法
その1:用途発想ゲーム
その2:「もし〜だったら」ゲーム
その3:ランダムな単語との関連付けゲーム
最終章:まとめ
第1章:ラテラルシンキングの基本原理
従来の思考法、特に論理的思考(垂直思考)は、既存の情報や知識を基に段階的に結論を導き出す方法です。一方、ラテラルシンキングは、これとは異なるアプローチを取ります。
- 多角的な視点:一つの問題に対して、様々な角度から考える。
- 既存の枠組みからの脱却:常識や前提を疑い、新しい視点を探る。
- 偶然性の活用:予期せぬ連想や偶然の発見なども重要な要素として扱う。
例えば、「通勤時間を短縮したい」という課題について考えてみましょう。
従来の垂直的思考では、
- 近所に引っ越しする
- 交通手段・ルートを見直す
といった解決策が思い浮かびます。
では、問題の前提自体を疑問視し、異なる角度から考えてみるとどうなるでしょう?
- 「通勤」の概念を変えてみる
→物理的な移動をなくす為、在宅勤務やバーチャルオフィスを導入。
- 「時間」の捉え方を変えてみる
→通勤中に業務をこなし、実質的な勤務時間とする。
問題の本質を多面的に捉え直すことで、従来では思いつかなかったようなアイデアを生み出すことが出来るかもしれません。「枠外で考える」というより、「枠組み自体を作り直して考える」イメージに近いかと思います。
この思考法を実践することで、日常生活やビジネスにおける様々な課題に対して、より柔軟で創造的なアプローチを見出すことができます。ラテラルシンキングにおいて重要なことは、「当たり前」と思われている前提や制約を意識的に取り払い、自由な発想を許容する姿勢です。
第2章:ラテラルシンキングのメリット
その1:創造性の向上
通常の論理的思考パターンから脱却して予想外の発想を許容することにより、従来にない革新的なアイデアが生まれやすくなります。
例:ある科学者が強力な接着剤を開発しようとして失敗し、粘着力の弱い接着剤が出来上がってしまいました。しかし、「用途を変える」方向で前提を検討し直すことにより、付箋紙(ポストイット)という製品を創り出しました。通常なら失敗として片付けられるところを、別の用途を考えることで革新的な製品が生まれました。
その2:柔軟性の向上
固定観念や既存の枠組みにとらわれず、状況に応じて考え方を変える能力が向上します。急激な変化に対応したり、限られたリソース内で最大限の効果を発揮する製品を創り出したり、柔軟的な対応が可能になります。
例:コロナ禍でのレストランにて、店内飲食からテイクアウトやデリバリーへの迅速な転換を行ったことは、柔軟的な思考の結果といえます。また、スペースの限られた都市空間で効率的に作物を栽培するため、垂直方向に栽培スペースを積み重ねて拡大する垂直農法が生まれたこともラテラルシンキング的な発想と言えるでしょう。
その3:視野の拡大
多様な視点から物事を捉えることで、より包括的な思考や理解が可能になります。
例)環境問題への取り組みでは、サーキュラーエコノミー(循環経済)という新しい経済モデルが注目されています。従来の3R「リデュース」「リユース」「リサイクル」といった廃棄物削減から視野を広げ、設計段階から廃棄物を出さないように製品を配慮する取り組みが行われています。
これらの例からわかるように、ラテラルシンキングは企業経営から社会問題の解決まで、幅広い分野で有効に機能します。この思考法を意識的に取り入れることで、個人でも組織でも、より創造的で効果的な問題解決が可能になります。
第3章:ラテラルシンキングのデメリット
その1:効率性の低下
通常の論理的思考に比べて結論に辿り着くまで時間がかかる場合があり、緊急を要する状況では適さないこともあります。また、アイデアを広げることに集中しすぎて具体的な解決策に至らない可能性があります。
その2:実現可能性の問題
斬新なアイデアが生まれても、それを実現するための技術や資源が不足している場合があります。
その3:評価の難しさ
従来の基準では評価が難しい新しいアイデアが生まれた場合、その価値を正当に評価できない可能性があります。
これらのデメリットを克服するためには、ラテラルシンキングと従来の論理的思考を適切に組み合わせることが重要です。状況に応じて最適な思考法を選択し、バランスを取ることで、より効果的な問題解決や創造的な活動が可能になります。
第4章:ラテラルシンキングの実践方法
それでは実際にラテラルシンキングを活用しながら課題について考えてみましょう。創造的な発想や問題解決に有効的な思考法かどうか、実感して頂ければ幸いです。
「食品廃棄物の削減」という課題について考えてみます。
従来の垂直的思考では下記の様な解決策が発想できます。
- 食品ロス削減のキャンペーンを実施
- 賞味期限の見直し
- フードバンクの利用促進
ラテラルシンキング的に考えてみるとどうでしょう?
- 「廃棄物」の定義を変えてみる
→食品廃棄物を新たな食材として再定義(例:パンの耳で新製品開発)
→廃棄予定の食材専門のレストランやマーケットを展開
- 廃棄物の創造的活用を考えてみる
→食品廃棄物からバイオプラスチックを生成し、食品パッケージに使用
→廃棄される食材を活用した地域コミュニティのエネルギー自給システムの構築
- 流通システムの再構築を考えてみる
→AIを活用した需要予測と、それに基づくジャストインタイム生産・配送
→消費者同士が余剰食材を取引できるフードシェアリングプラットフォームの構築
- 消費行動の変化を促す方向で考えてみる
→「不揃い野菜」の価値を再定義し、見た目ではなく栄養価で選ぶ文化の醸成
→購入した食材の使用状況をトラッキングし、適切な消費を促すスマート冷蔵庫の開発
これらの回答例は、既存の枠組みや常識にとらわれず、問題の本質を多角的に捉え直すことで生まれた創造的なアプローチです。デメリットで述べたように実現性の問題などはありますが、ラテラルシンキングを活用することで、従来では思いつかなかったような解決策を見出すことができます。
第5章:ラテラルシンキングを活用したコンサルティング事例
弊社の案件にて、BtoC向け企業であるクライアントがBtoB向けに新しくサービスを開発・検討するプロジェクトがあり、ラテラルシンキングが役立った瞬間があります。
プロジェクトの序盤にて、「従来のビジネスモデルだけではなく、自社に応用できそうな先進的なビジネスモデルがあれば知りたい」という先方の要望がありました。
要望に対して、従来の論理的思考であれば、顧客企業と直接関連しており応用が効きそうという理由から、toC向け競合企業を重点的に調査する等の方針が考えられます。
しかし、それでは限られた事例しか取得できない為、弊社では別角度・別軸でも調査・検討しました。
それは、BtoBのビジネスモデルをバリューチェーンの違いにより分類した上で、各業界に対してバリューチェーン全体の中でどのようなビジネスモデル(企業支援/協業等)を描くことが可能か、幅広い範囲で検討するというものです。
※バリューチェーンとは、企業における各事業活動を価値創造のための一連の流れとして把握する考え方を指します。
例えば、自社開発・販売まで行うBtoC企業であれば下記のようなバリューチェーンが考えられます。
商品企画→材料・資材調達→製品・品質管理→流通→販売(店舗orEC)→アフターサービス
関連する競合企業に絞らず、バリューチェーンという観点からビジネスモデルの調査を検討することにより、「従来のビジネスモデルだけではなく、自社に応用できそうな先進的なビジネスモデルがあれば知りたい」というクライアントの要望に対して、該当する事例を幅広く調査し、多くの可能性を提示することが出来ました。
一例を挙げると、水族館経営をしている企業がその運営ノウハウを活かして他社向けに水族館プロデュースを行っているビジネスがありました。こちらは自社の施設運営ノウハウを活かす形態として、クライアント企業でも応用・実施出来る1つのビジネスモデル案になります。
このように、従来の考え方では満足な結果が得られないとき、立ち止まって前提や制約から考え直すことにより、新しい角度での発想が出来ることがラテラルシンキングの良さになります。
※バリューチェーンや本事例については、機会があればまた別の記事にて、詳しく掘り下げて解説させて頂こうと思います。
第6章:ラテラルシンキング力を鍛えるトレーニング方法
その1:用途発想ゲーム
身近な物の新しい使い方を考えることで、物の本質的な機能や特性に注目し、既存の用途にとらわれない思考を養います。
例:ペットボトルの別の用途を10個考えてみる。
その2:「もし〜だったら」ゲーム
現実にはありえない状況を想定し、その結果を考えることで、現実の制約や前提を一時的に取り払った思考を促します。
例:「もし重力がなくなったら、日常生活はどう変わるか」を考えてみる。
その3:ランダムな単語との関連付けゲーム
辞書からランダムにピックアップした単語同士を関連付け、革新的なアイデアが生み出せないか思考を巡らせることにより、様々な角度から柔軟的に考える力を養います。
例:「車」、「スマートフォン」
狭い駐車スペースに車を入れる際、車の外に立ってスマートフォンアプリで車を遠隔操作すれば、視野が広がることでスムーズかつ綺麗に駐車させることが出来るのではないか?
最終章:まとめ
これまで見てきたように、ラテラルシンキングはその事象の前提を疑い、様々な角度から物事を考え直してみる思考法になります。
皆さんも、日々の生活や仕事の中で、時には立ち止まって「他の見方はないだろうか?」と自問してみてはいかがでしょうか?そうすることで、徐々にラテラルシンキングの力が身につき、より創造的で柔軟な思考力が身についていきます。
ラテラルシンキングを通じて、あなたの中に眠る創造性を解き放ち、新たな価値を生み出す過程を楽しんでください。その先には、きっと驚きと発見に満ちた世界が広がっているはずです。
- マガジン編集部
- この記事はマガジン編集部が執筆・編集しました。
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